見えているかい
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きみ
ここにあるもの全て
世界のすべてだと信じて
それなのに世界が見えないって
嘆いていやしないかい

無いものばかりを嘆いて
自分の手の中にあるものを
忘れていやしないかい
きみが忘れているもの
ぼくには宝物に見えるよ

きみの好きな唄はなんだい
その歌い手はなんと唄っているんだい
いい唄だね
ぼくのお気に入りになったよ

鏡がないから見えないというなら
唄を聴いてごらんよ
何か見えてこないかい
見えないなら聴いてみよう
聴こえないなら嗅ごうか
臭いがしないならもう触ろうよ
チクッとしたらごめんよ

ちょっとさ
忘れていた痛みを
思い返すような真似しないで
ぼくを見てごらんよ
きみの手を握って
目をつむって歩いているんだ
- - -
皹(ヒビ)
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 ねえ
 落ちてヒビが入ったよ
 ぼくの体にヒビが入ってしまったみたいだよ

 次に落ちたら割れてしまうんじゃないかって冷やっとして
 こんなところに置いといたらまた落としてしまうかも知れないからって
 別のところに置いたんだけれど
 誰かの手に当たるかも知れないし
 めまいがしてふらふらと行ってはいけない方向に行ってしまうかも知れないし
 天災が来て落ちるかも知れない
 それだけが怖くて
 ただただ落ちることが ほんとうに怖くてね
 誰かが近づくことも怖くて
 自分が立っている足元も
 ううん この足さえ信じることができなくて

 ずっと冷やっとしているんだ
 いつからだろうな
 叫んで嘆き続けて
 周りの声が聴こえなくなったみたい
 いつからなんだろう
 人の声が聴こえなくなったし
 自分の声が小さくなったようなんだ
 そしたら
 いつのまにか聴こえなくなった


 誰かが近づいてきてその手を添えてくれることも
 その手がいつか離れるかも知れないと思うと怖いよ
 踏ん張るための足を投げ出してみたけど
 こんな役立たずな足 なくなってしまえばいい
 誰かに差し出しても受け取ってもらえないし

 ぼくはね
 日々増えていくヒビにいつも冷やっとしているんだ
 見えないだろう
 ぼくも見えないよ
 でもヒビが入っていってるって思うんだ
 勘違いじゃないよ
 だってそしたら何でこんなに痛いんだい
 勘違いじゃないってば


 信じてくれる人なんていないでしょ
 だから そんなこと誰にも言えやしない
- - -
雨宿り
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雨が降って
地面がゆるみ
頑なに固くなった壁は
とろりとろり

雨が降って
パンプスに水が入って
傘を差すあなたに呼ばれたの
はらりはらり

雨が降って
屋根の下に潜り込んで
何か飲もうよって
ボトルボトル

雨が降って
あたたかく湿気た部屋は
窓ガラスが白く
くもるくもる

雨が降って
肌についた水滴
なじませるように
するりするり

雨が降って
いつまでも雨宿り
止まなくてもいいのよって
ぽつりぽつり
- - -
雪解け

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ぼくら
同じ春を夢見て歩いた
寒いねと言いながら
雪解けはもうすぐ
すぐそこだと思っていた

けどさ
もうそこだよと導く声は
きみにしか聴こえずに
ぼくは疑ったんだ
きみを
もうこのままだと呼ぶ手が
ぼくだけに見えて
ぼくは違う道を歩いたんだ
きみに見えないこの手
ぼくに聴こえないその声
ぼくは疑ったんだ
きみを

ねえ きみ
ぼくが話すこんな話を
きみは疑うかい

- - -
涙くん
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わけもなく涙を流す
わけもないのに涙が流れる

涙くんはいつも
どうしてボクを流すのと言いながら
流れていく
しとしとと
どくどくと

涙くんは聞き上手
流れながら聞くのさ
涙のわけを
わけもなく流されるボクのわけを
- - -
ごー ごー
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ごー ごー
咲いた花に気付かなかったんだ
ごー ごー
玄関で靴を踏んで外へ出たんだ
ごー ごー
忘れものに気づかなかったんだ
めー めー
くろ山羊さんのように紙を食べて
めー めー
ただ鳴くことしかしなかったんだ
めー めー
言えたはずのありがとうを何度逃しただろう
んー んー
んー んー
伝えたいことはあるんだけれど
んー
- - -
景色


あの海を越えて見える景色より
ここには見たい景色があるの
- - -
他人の花


心を惑わされるなと
心配してくれているの
それとも責めているの
もらった花を そんなものすぐに枯れてしまうんだと言う
枯れない花があるなんて
ねぇ、誰が思う

美しいものを見て美しいと素直に言えた
その美しさは今だけだと教えたいの
転ばぬ先の杖なの
それとも転んでほしいの

そこに花は咲いているのに
いつの間にか無口になった
誰かはまた人の花を見ては
すぐに枯れてしまうんだとささやいている
- - -
忘れないで


卑怯なの
やさしさだけ携えて
文句も言わせない
わたしの口は開いたままで
乾いてしまうわ

あなたの声
いつから聞いていないかしら
腐ってもげてしまうわ
ささやいてもくれない
誰もついばみに来さえもしない

忘れないわ
肌に触れたよろこびは
失ってもいない
色だけ失って
温度はまだ思い出せる

けど
窓の外に放たれたまま
見守られているのかしら
忘れられているのかしら
わたしはもう乾いているのに
いつまで風と陽にさらされて

見守られているのかしら
忘れられているのかしら
- - -
鬼ごっこ



さがしてよ
見つからないと言わないで
信号待ちのあいだ
ミルクをかき混ぜるあいだ
大人ってなんだろう
子供ってなんだろう
ずっと鬼ごっこしていたんだ

さがしてよ みつけて
あの子の電話待っているときでも
眠れない夜でも
ずっとここにいたんだ
さみしくないよ
だってぼくは子供で大人だから

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